2021年(令和3年)および2022年(令和4年)の二年間、岡山市の石山公園の再整備及びパークマネジメント導入を見据えた課題検証およびパークマネジメントに向けた計画提案および具体化に向けた研修等の業務を行いました。

■2021年度の取り組み

2021年度は、石山公園の過去の実施内容の整理と現状課題の洗い出しを行い、公園のあるべき姿、求める姿の提案を行い、石山公園活用検討会のメンバーらとともに、公園のイメージや公園に対る考え、意見を引き出すファシリテーター(舵取り役)として議論をまとめていきました。

課題検証およびパークマネジメント契約提案業務にあたってのステップは以下の通りです。

<ステップ1>

岡山市における都市計画の方針、および石山公園を中心としたエリア一帯における重要性、歴史的な文脈、まちづくりの方向性などを確認するため、市の政策方針などを参照しながら認識統一を図った。まちづくり計画をもとにオープンカフェの社会実験の実施目的やその結果、それらを踏まえたこれまでの石山公園活用検討会の活動の経緯や成果について確認した後、新しい都市と公園のモデルを目指し、公園の体験価値とそれらを支えるもの、および想定される課題を以下の3つに整理し意見交換を行った。

意見交換では、まずは参加者らが抱く石山公園のありたい姿、地域における石山公園の価値について意見をざっくばらんに意見を交わしてもらい、各々からの意見を集約していった。

<ステップ2>

ステップ1でのこれまでの活動の整理や議論を踏まえ、石山公園のありたい姿、具体的な活動方針を設定するため、「ロジックモデル」という方法論を活用した。本回では、ロジックモデルについての説明および議論の叩き台となる内容を提示し、意見を交わした。

* 「ロジックモデル」とは
事業や組織が最終的に目指す変化・効果の実現に向けた道筋を体系的に図示化したもので、事業の設計図に例えられる。ロジックモデルは一般的に、アウトカム、アウトプット、活動、インプットを矢印でつなげたツリー型で表現される。
ロジックモデルの作成は、事業により最終的に達成したい状況(=最終・長期アウトカム)の検討からはじめ、その最終的に達成したい状況を実現するためには何が必要か、という観点から逆算して中間(中期)アウトカム、初期アウトカム、アウトプットや活動、そのために必要な資源を検討する。
ロジックモデルを踏まえた検討方法では、最終アウトカムの検討、中期・初期アウトカムの検討、初期アウトカムを踏まえて、アウトプットおよび活動を導いていく。既に事業を実施している場合、これまで実施してきた事業が、上位の目的と照らして適切かを検討する。もし、最終アウトカムから逆算して考えてきた事業と現在実施している事業にギャップがある場合は、事業内容の修正も検討する。
最終アウトカムから逆算して考え、自団体の事業だけでは目標実現に十分でない場合は、自団体の事業を拡張するか、他団体・組織との連携を検討していく。

<ステップ3>

ステップ2で作成したロジックモデルの叩き台をもとにしながら、石山公園活用検討会のメンバーらと対面によるワークショップを通じて各自の考えの整理、およびロジックモデルを基盤とした石山公園のあるべき姿に向けた議論及び具体的な活動内容を洗い出していく回とした。

ワークショップでは、冒頭、各自の石山公園に対する考え方や思いについてシートをもとに対話を図り、シートをもとにしながらワークショップ参加者の考えを、ファシリテーターが意見を集約、拾い上げながら、あるべき姿に向けたブラッシュアップを図っていき、そこから出てきた意見や考えを言語化し、ロジックモデルに落とし込む作業を行った。

<ステップ4>

ワークショップを通じて、改めて石山公園の具体的な方向性(長期的なアウトカム)のイメージとして、3つの柱となるものが浮かび上がった。これらの長期アウトカムから逆算していきながら、具体的な活動案や必要な取り組みなどを洗い出すよう議論を行った。

今すぐにできるもの、今すぐにはできないかもしれないが、将来的にあったほうが良いものはなにか。自分達でできること、周囲の企業や団体を巻きこんでできることはなにか、を議論する。あわせて、それらの活動に必要なリソースについて考えていった。

<ステップ5>

ワークショップやその後の議論を通じて、最終的に石山公園活用検討会としてのロジックモデルが作成された。現時点で取りくめていない活動内容もモデル内に組み込まれたことで、今後の具体的なパークマネジメントに向けた重点的な活動も浮き彫りになった。

また、こうしたワークショップなどをとおし、検討会メンバー同士の石山公園に対する共通イメージや目標をすり合わせしたことも大きい。今後、個々の活動やプロジェクトにおいて、作成したロジックモデルを参照することで、取り組むプロジェクトがどのようなアウトカムに影響を及ぼすのか、といったことを考える参考となった。

もちろん、ロジックモデルは作成して終わりではなく、定期的な見直しも必要であり、将来像と現時点での取り組みとの差分を意識しながら、どのような場所にすることが長期的な目標に沿ったものになるのか、公園に関わる様々なステークホルダー同士で共有・認識できるようなフレームをもとに議論や意見交換をしていく体制としていくことが必要である。

■2022年度の取り組み

2022年度は、2021年度に作成したこれからの石山公園に必要な活動や取り組みの具体性についてのアイデアを生み出すため、すでに様々な公園活用やPMOに取り組んでいる方々らをゲストに呼んだ講習を行い、その後、石山公園においてどのような活動に落とし込むか、という場とした。

ゲスト1:岡山NPOセンター代表理事・石原達也氏

特定非営利活動法人岡山NPOセンター代表理事の石原達也氏をゲストにお迎えし、岡山県内及び全国のパークマネジメント事例の情報共有及びディスカッションを行いながら、石山公園活用検討会メンバーと共に石山公園の今後のあり方や公園活用、地域経済活性化についての目指す方向性やビジョンの共有を図った。

石原氏から、北長瀬ふれあい総合公園におけるパークマネジメントの取組についてお話いただきながら、市民が関わることにより公園の可能性が広がることの重要性について、公園の活用に向けた市民の会や事務局といった組織図とそれぞれの役割についてお話いただいた。

また、正式オープン前の1年間の取組として、活用準備会の役割は、公園活用を推進するためのルール(手法)の検討・整理、新公園オープン後の「協議会」の役割整理、社会実装の実施と課題把握、指定管理に向けた反映、社会実験の一環である助成事業の審査、社会実験の一環としての継続事業の承認など、オープンに向けた様々な取組を踏まえながら公園活用のあり方を模索している様子をお話いただいた。

ゲスト2:アーバンピクニック事務局長 村上豪英氏

今後の石山公園の活用に向けて、他地域のパークマネジメントに関する事例を学ぶため、9月29日に勉強会を実施した。勉強会は、石山公園活用検討会の委員の方々、および岡山市の関連部署職員らのみの会合とした。

勉強会では、アーバンピクニック事務局長、一般社団法人リバブルシティイニシアチブ代表理事等を務める村上豪英氏をゲスト講師として招聘し、村上氏が取り組んできた、神戸・東遊園地の活用のこれまでや、実践における課題、公園活用におけるポイントについてお話いただいた。後半は、勉強会に参加された委員や市職員らからの意見交換や質疑応答とした。

村上氏の話を通じ、市民主導による社会実験を丁寧に重ね、社会実験において展開されたオープンカフェやブックスタンドのような来園者に対するファシリティの提供および、カフェ等を通じた地域との接点を作ること、ホスピタリティの提供は単純なカフェの収益性のみならず、いかにして公園の魅力や来園を促進するためのコミュニケーションの場であること、そして、それらに従事する事業者の主体的な責任と参画の重要性が語られた。

また、イベント主催者らとの密なコミュニケーション、利用者や来園者を消費者ではなく主体的に公園活用に参画する「市民」とするための仲間作りの考え方は、石山公園においても石山公園をより良くしたいと考え、行動する人を増やしていくための方法論として大きな参考となる点であった。

石山公園にある多様な地域資源を活用した取り組みの創出を目指して

勉強会等を通じ、様々な観点から都市における公園の存在、公園の公共性、地域における居場所としての公園、地域住民らが、いかにして公園の活用や地域住民らが自主的に公園をより良くしていくために必要な考え方や仕掛け作りについての知見やノウハウについて考えるきっかけとした。

石山公園は、旭川水辺再生およびエリア一帯の価値、岡山城・後楽園といった周辺施設といった、周辺の多様な地域資源が点在する場所であり、それらを有機的につなげながら地域の拠点としての公園を有効活用することで、地域住民らは日々の憩いの場所、誰が気軽に過ごせる場所でありつつも、観光客等に対しても様々な地域の魅力を届ける場としての可能性が改めて再認識できたといえる。

これらの知見とともに作成したロジックモデルによる長期的目標設定や具体的な活動案を基盤に、今後の石山公園の具体的な活用方法、および石山公園の価値を創出するための事業構築の基盤を整え、具体的なパークマネジメントを推進していくための礎となる業務となった。

今後の公園運営や活用のための多様なステイクホルダーそれぞれにおける意識の共有を図っていき、各々が石山公園に対する当事者意識を持ち、互いにこれまで以上に緊密に連携しながら活動していくことが求められるだろう。石山公園の活性化、および旭川水辺まちづくり、岡山カルチャーゾーン一体の活性化、ひいては岡山市内全域の賑わい創出や地域ブランドの創出を図り、地域経済活性化の一助となるための活動のさらなる推進につなげていただきたい。

事業パートナー:岡山市、石山公園活用検討会
検討会事務局:NPO法人エンノバ
ファシリテーションおよび企画ディレクション:江口晋太朗(トーキョーベータ)

コメントを残す